食品用包装機の種類とその特徴:日本の工場における最適化

食品用包装機 縦ピロー包装機と横ピロー包装機

食品工場では、製品の鮮度保持、安全性確保、生産性向上、そして多様化する市場ニーズへの対応が常に求められています。これらの課題を解決するために不可欠なのが、高性能な食品用包装機です。本記事では、日本の食品工場で広く使用されている主要な包装機の種類と、それぞれの特徴について詳しく解説します。


1. なぜ包装機が重要なのか

食品包装は単に商品を包む行為ではありません。それは、製品の品質を損なうことなく消費者のもとに届けるための重要なプロセスであり、食品の寿命を延ばし、衛生状態を保ち、製品情報を伝達する役割を担っています。また、近年では環境負荷低減や作業者の安全性向上といった観点からも、包装機の選定と運用は、ますますその重要性を増しています。

日本の食品工場は、多品種少量生産から大量生産まで幅広い生産形態に対応する必要があり、限られたスペースでの効率的な稼働、省人化、そして高い精度が求められます。これらの要求に応えるべく、各メーカーは独自の技術を駆使した多様な包装機を開発・提供しています。


2. 主要な食品用包装機の種類と特徴

日本の食品工場で一般的に見られる包装機は、その機能や包装形態によって大きくいくつかのカテゴリに分類できます。

製袋充填包装機は、ロール状のフィルムから袋を成形し、内容物を充填し、密閉までを一貫して行う機械です。高い生産性と衛生性を両立できるため、スナック菓子、レトルト食品、冷凍食品、粉末調味料、液体調味料など、幅広い食品の包装に用いられています。

2-1. 横ピロー包装機 (Horizontal Form-Fill-Seal: HFFS)

横ピロー包装機
  • 特徴:
    フィルムを水平方向に搬送し、内容物を横方向から供給して包装します。個包装の食品(パン、菓子、弁当、惣菜など)に適しており、製品の形状に合わせて包装が可能です。比較的柔らかい製品や、トレーに入った製品の包装に強みがあります。
  • メリット:
    高速性に優れ、製品へのダメージが少ない。製品の形状に合わせた柔軟な包装が可能。
  • デメリット:
    縦ピロー包装機に比べて設置スペースがやや広い場合がある。
  • 包装例:
    食パン、菓子パン、和菓子、洋菓子、冷凍麺、チルド麺、レトルトカレーの袋包装、カトラリーセットの個包装など
横ピロー包装機

2-2. 縦ピロー包装機 (Vertical Form-Fill-Seal: VFFS)

縦ピロー包装機
  • 特徴:
    フィルムを垂直方向に搬送し、内容物を上部から落下させて充填・包装します。主に顆粒、粉末、液体、粒状の食品(スナック菓子、コーヒー豆、米、調味料、スープなど)に適しています。省スペースで設置が可能。高速で安定した包装が可能。
  • デメリット:
    製品の形状が不規則なものや壊れやすいものには不向きな場合がある。
  • 包装例:
    スナック菓子、ポテトチップス、米、豆類、砂糖、塩、粉末ジュース、コーヒー豆、ふりかけ、即席麺の具材など
縦ピロー包装機

2-3. カップ充填機

カップ充填機は、プラスチックカップや紙カップなどの容器に、ヨーグルト、プリン、ゼリー、惣菜、米飯などの食品を充填し、蓋材をヒートシールする機械です。衛生管理が特に重要視される乳製品やデザート類、日配品(日持ちのしない食品)の生産に不可欠です。

  • ロータリー式: 円形のテーブル上に容器を並べ、回転しながら各工程(カップ供給、充填、蓋材供給、シール、排出)を順次行います。多品種少量生産から中量生産に適しており、コンパクトな設計が可能です。
    • 包装例: 小ロットのヨーグルト、プリン、和風デザート、惣菜、介護食など。
カップ充填包装機

2-3. 真空包装機・ガス置換包装機 (MAP: Modified Atmosphere Packaging)

製品の鮮度を長期間保つために重要な役割を果たすのが、真空包装機やガス置換包装機です。空気(酸素)を除去することで、食品の酸化や微生物の増殖を抑制します。

  • 真空包装機: 袋内の空気を抜き取り、密閉する機械です。肉、魚、ハム、チーズなどの生鮮食品や加工食品、調理済み食品の保存期間を大幅に延長できます。
    • 包装例: 精肉、鮮魚の一次包装、加工肉製品(ハム、ソーセージ)、漬物、煮物、レトルト食品の二次包装、米などの長期保存。
真空包装機


3. 日本の食品工場における包装機の選定ポイント

日本の食品工場が包装機を選定する際には、以下の要素が特に重視されます。

  1. 生産能力と速度: 求める生産量に対して十分な処理能力があるか。
  2. 対応製品の多様性: 多品種少量生産に対応できるよう、異なる製品サイズや形状に柔軟に対応できるか。
  3. 設置スペース: 限られた工場スペースに収まるコンパクトな設計か。
  4. 衛生性と清掃性: 食品を取り扱うため、HACCPやFSSC22000などの衛生基準に対応できる設計か。分解洗浄が容易か。
  5. 省人化と自動化: 人手不足解消や人件費削減のため、いかに自動化・省人化が進められるか。
  6. メンテナンス性: 部品交換や日常メンテナンスが容易か。
  7. 省エネルギー性: 環境負荷低減とコスト削減のため、消費電力が少ないか。
  8. 安全性: 作業者の安全を確保するための安全装置や設計がなされているか。
  9. 環境対応: 資源削減、廃棄物削減に貢献できるか。リサイクル可能な包装材に対応できるか。
  10. 初期投資とランニングコスト: 導入費用だけでなく、消耗品費や電力費、メンテナンス費などの総コストを考慮する。

4. 最新の技術トレンドと将来展望

日本の食品包装機業界では、これらの要求に応えるべく、常に新しい技術が導入されています。

  • IoTとAIの活用: 包装機の稼働状況監視、故障予測、生産データ分析にIoT技術が導入され、AIによる最適な稼働条件の提案なども進んでいます。これにより、ダウンタイムの削減や生産効率の最大化が図られます。
  • ロボット技術の進化: 協働ロボットの導入により、人とロボットが隣り合って作業できる環境が実現し、省人化と柔軟な生産体制が両立されています。
  • 環境対応型包装: プラスチック使用量削減のため、紙製容器やバイオマスプラスチック、モノマテリアル(単一素材)フィルムに対応した包装機へのニーズが高まっています。
  • 多機能化・モジュール化: 一台で複数の包装形態に対応できる多機能機や、必要に応じて機能を拡張できるモジュール構造の機械が増加しており、設備投資の効率化に貢献しています。
  • デジタルツイン: 実際の包装ラインをデジタル空間で再現し、シミュレーションを行うことで、設計段階での課題発見や最適化、作業員のトレーニングなどに活用されています。

5. まとめ

食品用包装機は、日本の食品産業を支える上で不可欠な存在です。横ピロー包装機、縦ピロー包装機、カップ充填機、真空包装機、ガス置換包装機など、多種多様な機械がそれぞれの役割を果たしています。

これらの包装機は、食品の鮮度と安全性の確保、生産効率の向上、そして多様な市場ニーズへの対応という、日本の食品工場が直面する課題に対する重要なソリューションを提供しています。今後も、IoT、AI、ロボット技術、環境対応といった最新技術を取り入れながら進化を続け、日本の食文化を支える重要な役割を担っていくことでしょう。

適切な包装機を選定して最適に運用することは、食品工場の競争力を高め持続可能な生産体制を構築するために、ますますその重要性を増しています。