【2026年10月施行】栄養機能食品の表示基準が改正|上限値・下限値・機能表示の変更点と食品工場の対応

サプリメントのボトルやグミ、ビタミン剤を並べた、栄養機能食品の表示基準改正のタイトル画像

「うちの栄養機能食品は、このまま売り続けていいのか」「OEMで受託している商品の配合や表示を見直す必要があるのか」。2026年10月に入り、食品メーカーの品質保証や製造の担当者から、こうした確認が増えてきました。栄養機能食品は、国の基準を満たせば事業者の自己責任で機能を表示できる制度です。その基準そのものが変わったため、製造現場にも影響が及びます。

消費者庁は2026年10月1日、食品表示基準の一部を改正する内閣府令(令和8年内閣府令第89号)を公布し、同日に施行しました。栄養機能食品の成分ごとに定められている「下限値・上限値」、「栄養成分の機能」の文言、「摂取をする上での注意事項」が見直されています。機能表示の文言は制度の創設時(平成13年)に設定されたもので、日本人の食事摂取基準などの最新の知見に合わせた改正です。なお、2030年3月31日までの経過措置があり、すぐに全商品の表示を切り替えなければならないわけではありません。

本記事では、消費者庁が公開している内閣府令の新旧対照条文、食品表示基準の改正概要、栄養機能食品に関する検討会の資料をもとに、変更点と食品工場が確認すべき対応を整理します。実際に表示してよいかどうかは、必ず最新の食品表示基準と消費者庁の公表資料でご確認ください。


今回の改正の概要|いつから何が変わったのか

最初に、改正の全体像を押さえておきましょう。施行日と経過措置を知っておくと、社内での優先順位をつけやすくなります。

公布・施行日と経過措置

内閣府令は2026年10月1日に公布され、同日に施行されました。ただし附則で経過措置が設けられており、2030年3月31日までに製造・加工・輸入される加工食品(業務用加工食品を除く)と、同日までに販売される生鮮食品(業務用生鮮食品を除く)の表示は、改正前の別表第11の規定によることができるとされています。おおむね3年半の猶予があります。

項目内容
改正の根拠食品表示基準の一部を改正する内閣府令(令和8年内閣府令第89号)
公布・施行日2026年10月1日(公布と同日に施行)
改正の対象食品表示基準 別表第11(栄養機能食品の対象成分ごとの規定)
主な改正事項①栄養成分の下限値・上限値 ②栄養成分の機能の文言 ③摂取をする上での注意事項
経過措置2030年3月31日までに製造・加工・輸入される加工食品、同日までに販売される生鮮食品は、改正前の規定によることができる(業務用を除く)
検討の経緯栄養機能食品に関する検討会(令和7年度に3回、令和8年度に1回開催)で検討

猶予期間があるとはいえ、新商品やリニューアル商品を企画する段階では、新しい基準で設計しておくのが安全です。表示資材は製造のたびに印刷・発注されるため、切替のタイミングを早めに決めておくと混乱を避けられます。

栄養機能食品とはどんな制度か

栄養機能食品は、食生活で不足しやすい栄養成分の補給を目的に、国が定めた栄養成分の機能を表示できる食品です。対象は、容器包装に入れられた一般用の加工食品と生鮮食品です。対象となる栄養成分は、n-3系脂肪酸、ミネラル6種(亜鉛、カリウム、カルシウム、鉄、銅、マグネシウム)、ビタミン13種の合計20成分です。錠剤やカプセル剤などの形状の加工食品では、カリウムは対象から除かれています。

届出や個別の審査は不要の自己認証制度ですが、1日当たりの摂取目安量に含まれる栄養成分の量が、定められた下限値以上、上限値以下の範囲に収まっていることが条件です。また、「本品は、特定保健用食品と異なり、消費者庁長官による個別審査を受けたものではありません。」などの表示事項も義務づけられています。機能性表示食品や特定保健用食品とは別の制度なので、混同しないようにしましょう。

下限値・上限値の変更|20成分のうち10成分が見直し

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今回の改正で、製造現場に最も直接影響するのが数値の変更です。栄養機能食品の配合設計は、この下限値と上限値の範囲に収めることから始まります。

下限値・上限値が変わった成分一覧

20成分のうち、下限値または上限値のどちらかが変わったのは次の10成分です。矢印の左が改正前、右が改正後の数値です。

栄養成分下限値上限値
亜鉛2.64mg → 2.55mg15mg → 17mg
カルシウム204mg → 210mg600mg(変更なし)
鉄2.04mg → 1.95mg10mg(変更なし)
銅0.27mg → 0.24mg6.0mg → 4.6mg
マグネシウム96mg(変更なし)300mg → 320mg
パントテン酸1.44mg → 1.65mg30mg(変更なし)
ビタミンB10.36mg → 0.30mg25mg(変更なし)
ビタミンB120.72μg → 1.20μg60μg(変更なし)
ビタミンD1.65μg → 2.70μg5.0μg(変更なし)
ビタミンE1.89mg → 1.95mg150mg(変更なし)

一方、n-3系脂肪酸、カリウム、ナイアシン、ビオチン、ビタミンA、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンK、葉酸の10成分は、下限値・上限値とも変更されていません。数値は内閣府令の新旧対照条文と、消費者庁の検討会資料で確認しています。

栄養機能食品の上限値が変わった亜鉛・銅・マグネシウムの改正前後の範囲を比較した図

特に注意したいのは「銅」の上限値引下げ

上限値が下がったのは銅だけで、6.0mgから4.6mgになりました。1日の摂取目安量に銅を4.6mgを超えて含む商品は、改正後の基準では「栄養機能食品(銅)」として表示できません。反対に、亜鉛は15mgから17mgへ、マグネシウムは300mgから320mgへ上限値が引き上げられています。

下限値では、ビタミンB12(0.72μg→1.20μg)とビタミンD(1.65μg→2.70μg)、パントテン酸(1.44mg→1.65mg)が引き上げられました。現行の配合で下限値ぎりぎりに設計している商品は、新しい基準に照らすと下限値を下回る可能性があるため、早めの確認が必要です。

数値はどのように決められたのか

消費者庁の検討会資料によると、下限値は「栄養素等表示基準値の30%」を基本に設定されています。たとえば亜鉛の栄養素等表示基準値は8.5mgで、その30%の2.55mgが下限値です。なお、栄養素等表示基準値は2025年3月28日の食品表示基準改正で、日本人の食事摂取基準(2025年版)に合わせて見直されています。

上限値は、健康障害非発現量(NOAEL)や耐容上限量(UL)から日本人の平均的な摂取量を差し引く考え方などで算出されます。亜鉛と銅は、ULから摂取量の上位1パーセンタイル値を差し引いて算出されました。銅の場合は、UL(7.0mg)から2.41mgを引いた4.59mgを丸めて4.6mgとしています。カルシウムや鉄など、医薬部外品の1日最大分量が最も低い成分は、従来どおりその値を上限値としています。

栄養成分の機能表示の文言と注意事項の変更

数値だけでなく、パッケージに表示する文言も変わります。消費者に誤解を与えない表現にするための見直しで、成分によっては複数ある機能表示のうちの一部が削除されました。

機能表示の文言の主な変更例

変更の方向性は、「栄養素です」を「栄養素のひとつです」に改める、「必要な」を「助ける」に改める、といった内容が中心です。成分ごとの変更例は次のとおりです。全成分の文言は、新旧対照条文でご確認ください。

栄養成分改正前改正後
n-3系脂肪酸皮膚の健康維持を助ける栄養素です。皮膚の健康維持を助ける栄養素のひとつです。
亜鉛味覚を正常に保つのに必要な栄養素です。味覚を正常に保つのを助ける栄養素です。
亜鉛たんぱく質・核酸の代謝に関与して、健康の維持に役立つ栄養素です。(この文言は削除)
カリウム正常な血圧を保つのに必要な栄養素です。血圧を正常に保つのを助ける栄養素です。
カルシウム骨や歯の形成に必要な栄養素です。骨や歯を作るのに必要な栄養素のひとつです。
ビタミンA夜間の視力の維持を助ける栄養素です。暗所での視力を正常に保つのを助ける栄養素です。
ビタミンB1炭水化物からのエネルギー産生と皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です。エネルギーを作るのを助ける栄養素のひとつです。
栄養機能食品の機能表示の文言を改正前と改正後で並べて比較したカード

消費者庁の資料によると、基準で定められた文言は、表示内容の主旨が同じであっても、変化を加えたり省略したりすることは認められません。「骨や歯を作るのに必要な」を「骨や歯をつくるのに必要な」と言い換えるといった独自の調整はできないため、版下の修正は条文の文字どおりに行う必要があります。

摂取をする上での注意事項も見直し

摂取をする上での注意事項も、改正の対象です。たとえばビタミンAでは、改正前は「妊娠三か月以内又は妊娠を希望する女性は過剰摂取にならないよう注意してください。」でしたが、改正後は「妊娠三か月以内又は妊娠を希望する女性は、ビタミンAの過剰摂取にならないよう注意してください。」と、成分名が明記される形になっています。注意事項は成分ごとに定められた文言を表示する決まりのため、対象成分ごとに新旧の文言を照合してください。

食品工場・OEM製造現場が確認すべき対応

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ここからは、製造現場の観点で、いつ何を確認すべきかを整理します。栄養機能食品は、配合・分析・表示・取引先との取り決めが一つにつながっているため、部署をまたいだ確認が欠かせません。

配合設計と分析値の見直し

栄養機能食品の成分量は、基準で定められた方法により得た1日当たりの摂取目安量中の量が、下限値以上かつ上限値以内であることが求められます。製造ロットのばらつきや、保存中の成分の減少を考えると、設計値は下限値と上限値の中間に余裕を持たせておくのが基本です。

まずは自社の栄養機能食品を一覧にして、「成分名」「1日摂取目安量」「1日摂取目安量中の含有量(設計値・分析値)」を、改正後の下限値・上限値と並べて確認しましょう。特に、銅を含む商品、ビタミンB12・ビタミンD・パントテン酸の下限値付近で設計している商品は優先して確認してください。なお、機能性表示食品の製造管理(GMP)については、機能性表示食品のGMP義務化の記事で解説しています。

パッケージ・表示資材の切替管理

経過措置は「製造・加工・輸入された日」を基準に設けられています。旧基準の表示で製造できる期限は2030年3月31日までですが、新旧の資材が混在すると、誤った文言の商品が出荷される恐れがあります。資材の発注ロット、版下の管理番号、切替日を一覧にして、新旧の資材が現場に混在しないよう管理しましょう。食品表示全般の確認ポイントは、食品工場の食品表示法対応ガイドも参考になります。

委託元・取引先との調整と推奨スケジュール

OEMで製造を受託している場合は、表示内容の責任の所在や、規格書・仕様書の改訂手順を委託元とあらかじめ確認しておくと安心です。次の表は、対応を進める際のスケジュールの一例です。実際の時期は、自社の商品数や資材の在庫に合わせて調整してください。

時期(例)主な対応
2026年10月〜12月対象商品の洗い出し、1日摂取目安量と含有量の棚卸し、新基準との照合
2027年(上半期)新基準に適合しない商品の配合・摂取目安量の見直し、新表示の版下案の作成と社内確認
新商品・リニューアル品改正後の下限値・上限値、文言、注意事項で設計し、最初から新基準で製造
2030年3月31日まで経過措置の期限。それまでに製造・加工・輸入する加工食品は、改正前の規定によることができる
品質管理の担当者が栄養成分の分析結果の書類とパッケージの表示案を見比べて確認している様子

このスケジュールは、基準の施行日と経過措置の期限を前提にした一般的な進め方の例です。自社商品の事情に合わせて、無理のない計画を立ててください。


まとめ:数値・文言・注意事項の3点を、経過措置内に切り替える

栄養機能食品の食品表示基準は、2026年10月1日に改正・施行されました。下限値・上限値は10成分で見直され、銅の上限値は6.0mgから4.6mgに引き下げられています。機能表示の文言と注意事項も改正されており、基準の文言は一字一句そのまま表示する必要があります。経過措置は2030年3月31日までに製造・加工・輸入される加工食品が対象です。

まずは自社の栄養機能食品を洗い出し、改正後の数値に適合しているかを確認するところから始めましょう。なお、本記事は消費者庁が公開している資料にもとづく一般的な整理であり、個別の商品の表示の適否を保証するものではありません。詳細は消費者庁「食品表示基準の一部改正について」の最新の掲載内容をご確認ください。

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今井 正久 プロフィール写真
サイト運営者・代表者紹介
今井 正久
FMネットワーク・エンタープライズ株式会社 代表取締役CEO
食品工場設備衛生管理・HACCPCIP洗浄異物混入対策生産ライン設計省エネ設備DX化推進
食品機械エンジニアとして20年以上のキャリアを持つ食品工場専門コンサルタント。国内外300社以上の食品工場で設備設計・生産ライン構築・衛生管理体制の整備を支援してきた実績を持つ。HACCP義務化対応・FSSC22000認証取得・異物混入対策・CIP洗浄システム導入・DX化推進など、食品安全と生産性向上の両立を得意とする。