「原材料表示の順番、これで法律通りですか?」「消費期限と賞味期限、社内の誰かに正確に説明できますか?」食品工場の表示ラベルは、前任者からの引き継ぎや長年の慣例のまま作られていることが少なくありません。しかし食品表示のミスは、行政指導や自主回収、報道による信用失墜に直結する重大なリスクです。
実際に消費者庁は2026年7月、原産地表示やアレルゲン表示などを重点事項とした「食品表示の適正化に向けた夏期一斉取締り」を、都道府県等と連携して全国で実施しました。また、2025年3月28日には食品表示基準が改正されて食品添加物表示や栄養成分表示のルールが変わり、2026年4月1日にはアレルゲン表示の対象にカシューナッツが加わっています。「これまで問題なかったから大丈夫」という認識のまま放置していると、気づかないうちに違反状態になっているケースは珍しくありません。
本記事では、食品表示法の全体像から、一括表示欄で押さえるべき必須記載事項と現場で起こりやすいミスのパターン、2025〜2026年の主な改正ポイント、原料原産地表示・栄養成分表示の実務、そして表示ミスを防ぐ社内体制のつくり方までを、食品工場の担当者向けに整理して解説します。
食品表示法とは何か、食品工場の担当者が押さえるべき全体像
食品表示法は、旧JAS法・食品衛生法・健康増進法にそれぞれ分かれていた表示関連の規定を一本化した法律です。まずは法律の位置づけと、違反した場合の実際のリスクから確認しておきましょう。
3つの法律を統合してできた背景
かつて食品の表示ルールはJAS法・食品衛生法・健康増進法の3つに分かれており、事業者にとって非常に分かりにくいものでした。2015年に施行された食品表示法は、この3法の表示関連規定を「食品表示基準」という一つの基準にまとめたものです。名称・原材料名・添加物・アレルゲン・原産地・栄養成分など、パッケージに記載すべき事項の大半はこの食品表示基準によって定められています。基準は消費者庁が所管しており、法改正を伴わずに基準の一部改正という形で頻繁にアップデートされる点が特徴です。HACCPをはじめとする食品安全規格全体との関係は食品工場のHACCP・食品安全規格 完全ガイドでも解説していますので、あわせてご確認ください。
違反した場合の罰則とリスク
食品表示基準への違反が確認されると、まず都道府県や保健所から改善指導が入り、改善が見られない場合は指示・命令、さらには事業者名の公表や罰則(拘禁刑・罰金)に発展します。行政処分そのものよりも実務上深刻なのは、指示・命令や公表が報道されることによる信用の失墜と、それに伴う自主回収コストです。実際に消費者庁は2026年7月1日から31日にかけて、食品表示の適正化に向けた夏期一斉取締りを全国で実施しており、原産地・原料原産地表示の適正化や特定原材料(アレルゲン)の取り扱いが重点事項に挙げられていました。「指摘されてから直せばいい」という考え方はリスクが大きすぎます。
【2025〜2026年】食品表示基準の改正ポイントと夏期一斉取締り
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食品表示基準は消費者庁により随時改正されています。2025年3月28日には大きな改正が公布・施行され、2026年4月1日にはアレルゲン表示の改正が施行されました。ここでは、食品工場の実務に直接関わる改正内容と、2026年7月に実施された取締りの動きを整理します。
2025年3月28日施行の主な改正内容
2025年3月28日に施行された改正は、大きく3つの領域に及びます。1点目は食品添加物表示で、栄養強化の目的で使用される添加物について表示を免除していた規定が削除され、表示免除は加工助剤とキャリーオーバーのみとなりました。経過措置は2030年3月31日までです。2点目は栄養成分表示で、「日本人の食事摂取基準(2025年版)」に基づき栄養素等表示基準値と栄養強調表示の基準値が見直されました(経過措置は2028年3月31日まで)。あわせて、食物繊維の許容差の見直しやゼロ表示の規定の追加など、栄養成分の表示方法に関する改正(経過措置なし)も行われています。3点目は個別品目ごとの表示ルールの見直しで、農産物缶詰などが対象です(調理冷凍食品に関する規定は2026年4月1日施行、経過措置は2030年3月31日まで)。経過措置期間があるとはいえ、ラベルデータの改版には時間がかかるため、早めの情報収集と対応スケジュールの検討が欠かせません。
| 改正項目 | 主な内容 | 経過措置期限 |
|---|---|---|
| 食品添加物表示(2025年3月28日施行) | 栄養強化目的の添加物の表示免除規定を削除し、原則表示に | 2030年3月31日 |
| 栄養成分表示(2025年3月28日施行) | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」に基づき栄養素等表示基準値・栄養強調表示の基準値を見直し(食物繊維の許容差の見直し等は経過措置なし) | 2028年3月31日(基準値の改正部分) |
| 個別品目表示ルール(2025年3月28日施行、調理冷凍食品は2026年4月1日施行) | 農産物缶詰などの個別品目の表示ルールを見直し | 2030年3月31日 |
| アレルゲン表示(2026年4月1日施行) | カシューナッツを特定原材料(義務表示)に追加し、ピスタチオを特定原材料に準ずるもの(推奨表示)に追加 | 2028年3月31日 |
2026年4月施行:アレルゲン表示にカシューナッツを追加
2026年4月1日に食品表示基準が改正され、アレルゲンの義務表示対象(特定原材料)に「カシューナッツ」が加わり、「ピスタチオ」は特定原材料に準ずるもの(推奨表示)に追加されました。経過措置は2028年3月31日までで、加工食品(業務用を除く)は同日までに製造・加工・輸入されるものが従前の表示によることができます。ただし、経過措置の期間内であっても、原材料にカシューナッツが含まれる製品は、早めにラベルを改版するのが安全です。アレルゲンの管理体制の見直しにもあわせて取り組みましょう。
2026年7月に実施された夏期一斉取締りの重点事項
消費者庁は2026年7月1日から31日にかけて、都道府県等と連携し、食品表示の適正化に向けた夏期一斉取締りを全国で実施しました。同庁の発表(2026年6月25日)では、重点事項として、①食品リコール(自主回収)に係る主な発生原因を踏まえた注意喚起、②外国人向け輸入食材店で販売されている食品表示の適正化等の推進、③特定原材料及び特定原材料に準ずるものの取扱い、④原産地及び原料原産地名表示の適正化、⑤カンピロバクター食中毒対策の推進が挙げられています。食品工場にとっても、取引先の小売・卸から表示の確認依頼が増える時期です。毎年同じ時期に実施されることが通例のため、自社のラベル表示を定期的に棚卸しし、記載内容と実際の原材料・製造工程が一致しているかを確認しておくことをおすすめします。
一括表示欄の必須記載事項と食品工場で起こりやすいミス
表示ミスの多くは、複雑な原料原産地表示や栄養成分表示ではなく、実は一括表示欄の基本的な記載事項で発生しています。まず必須項目を確認したうえで、現場でありがちなミスのパターンを見ていきましょう。
一括表示欄に記載すべき8つの基本項目
加工食品の一括表示欄には、名称、原材料名(添加物と区分し、食品添加物以外の原材料を重量順に記載)、添加物(物質名または簡略名を重量順に記載)、アレルゲン、内容量、消費期限または賞味期限、保存方法、製造者(または加工者・輸入者)の氏名・住所を記載する必要があります。このほか、対象品目では原料原産地名の表示も必要です。アレルゲンについては、原則として原材料名・添加物の直後に個別表示する方式が基本ですが、一括表示欄の末尾にまとめて記載する方式も認められています。どちらの方式を採用しているかによって、原材料変更時にチェックすべき箇所が変わる点に注意が必要です。アレルゲンの管理体制については食品工場のアレルゲン管理完全ガイドで詳しく解説しています。消費期限・賞味期限の設定根拠については食品工場の賞味期限・消費期限の設定方法完全ガイドもあわせてご覧ください。

現場で頻発する記載ミスのパターン
表示ミスは、原材料やレシピの変更が表示原稿まで正しく伝わっていないことが原因で発生するケースが大半です。代表的なパターンを整理すると、次のようになります。
| 項目 | よくあるミス | 主な原因 |
|---|---|---|
| 原材料の記載順 | 添加物と食品原材料を混在させて重量順を誤る | 原料切り替え時にレシピだけ更新し表示への反映漏れ |
| 消費期限・賞味期限 | 年月日の記載形式や印字位置の誤り | 印字設定テンプレートの使い回し |
| アレルゲン表示 | コンタミ由来のリスクと実際の表示内容が不一致 | 検査結果が表示更新に反映されていない |
| 原料原産地 | 対象外の原材料まで表示、または対象品目の表示漏れ | 表示対象範囲の判断誤り |
原料原産地表示制度への対応
2017年の制度改正により、全ての加工食品を対象に原料原産地表示が義務化されました(経過措置は2022年3月末で終了済みです)。ここでは食品工場が実務で押さえるべきポイントを整理します。
対象原材料と表示方法(国別重量順表示・又は表示ほか)
原則として、重量割合が最も高い原材料(対象原材料)について、原産地を国別に重量の多い順に表示します(国別重量順表示)。ただし、原産地が頻繁に変わる原材料については、「A国又はB国」と表示する「又は表示」や、国名の代わりに「輸入」などと表示する大括り表示、中間加工原材料に用いる製造地表示など、例外的な表示方法も認められています。下の図は、「又は表示」と「国別重量順表示」の表示例のイメージです。どの表示方法を採用するかは、原材料の調達実態に応じて事前に整理しておく必要があります。農林水産省が公開している事業者向け活用マニュアルも参考になりますが、自社の調達パターンに正しく当てはめる判断は容易ではないため、迷った場合は表示の専門家や行政窓口への確認をおすすめします。

原料切り替え時に表示漏れを防ぐ社内フロー
原料原産地表示で最も事故が起きやすいのは、コスト削減や供給不安を理由に仕入先・産地を切り替えたタイミングです。購買部門が原材料を切り替えた際、その情報が表示・品質保証部門まで確実に伝わる仕組みがなければ、旧表示のまま出荷してしまうリスクが残ります。原材料マスタと表示原稿を紐づけて管理し、原料変更申請のワークフローに「表示変更要否の確認」を必須項目として組み込むことが有効です。原材料のロット管理・トレーサビリティ体制を整えておくと、この確認作業もスムーズになります。ロット管理の構築方法は食品工場のトレーサビリティ・ロット管理システム構築ガイドで詳しく解説しています。
栄養成分表示の実務ポイント
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栄養成分表示は2020年4月から原則として全ての加工食品に義務化されており、中小食品工場にとって実務上の負担が大きい項目の一つです。
表示義務の対象と省略が認められるケース
熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量の5項目が基本の表示義務項目です。一方で、極めて短期間で消費される食品、小規模事業者が販売する食品、酒類など一部の食品カテゴリーでは表示が省略できる規定もあります。ただし省略規定に該当するかどうかの判断を誤ると、本来表示すべき情報が抜け落ちたまま出荷されることになるため注意が必要です。
分析値と計算値、どちらを使うべきか
栄養成分の数値は、実際に食品を分析して得た「分析値」と、レシピ・配合表から計算する「計算値」のいずれかで表示できます。分析値は精度が高い一方でコストと時間がかかり、計算値は迅速に対応できる一方でレシピ変更のたびに再計算が必要です。多くの中小食品工場では、初回のみ分析値で基準値を確定し、以降の同一レシピについては計算値または合理的な推定値を用いる運用が現実的です。ただし数値には一定の誤差許容範囲が定められているため、大幅なレシピ変更時には再分析を検討する必要があります。
表示ミスを防ぐ社内体制のつくり方
ここまで見てきたように、表示ミスの多くは制度の複雑さそのものよりも、原料変更やレシピ変更の情報が表示原稿まで正しく伝わらない「情報伝達の断絶」から生まれます。最後に、現場で実践しやすい体制づくりのポイントを紹介します。
表示原稿の作成・承認・印字のダブルチェック体制
表示原稿は、原材料の変更や法改正のたびに更新が必要になります。作成担当者と承認担当者を分離し、原材料マスタとの突合チェックを承認プロセスに組み込むことが基本です。さらに印字工程では、印字内容と表示原稿が一致しているかをロットの立ち上げ時と切り替え時に必ず現物確認する運用が有効です。人による目視確認だけに頼ると、繁忙期のヒューマンエラーを防ぎきれません。
印字検査装置・ラベルチェッカーの活用
近年は、印字された賞味期限・ロット番号・アレルゲン表示などをカメラで自動読み取りし、登録済みの正しい表示データと照合して不一致を検知する印字検査装置(ラベルチェッカー)の導入が中小食品工場にも広がっています。目視検査だけでは見逃しがちな微細な印字ミスや旧ラベルの混入を機械的に検出できるため、表示ミスによる自主回収リスクを大幅に下げることができます。既存の包装ラインへ後付けできる機種も多く、包装機自体の入れ替えとあわせて検討する価値があります。包装機の種類・選び方は包装機の選び方完全ガイドで解説していますので、印字検査装置の後付けや包装ラインの見直しをご検討の際は、現場の運用に合った機種選びから既存ラインとの適合性まで、ぜひ弊社にご相談ください。

まとめ:改正が続く今こそ表示体制を棚卸ししよう
食品表示法は、うっかりミスであっても行政処分や自主回収に直結しうる、食品工場にとって最も見落とせないリスクの一つです。2025年3月の食品表示基準の改正に続き、2026年4月にはカシューナッツのアレルゲン表示が義務化され、7月には夏期一斉取締りも実施されました。自社の表示体制を棚卸しする良い機会といえます。
一括表示欄の基本項目の再確認、原料原産地表示のロジック整理、栄養成分表示の運用ルール明確化、そして表示原稿から印字までのダブルチェック体制の構築を、優先順位をつけて進めていきましょう。「自社の表示体制に不安がある」「印字検査装置の導入を検討したい」という場合は、ぜひ弊社にご相談ください。食品工場の設備・運用に精通した専門チームが対応します。
食品表示体制のご相談・印字検査装置の導入もお気軽にどうぞ














