「機能性表示食品のGMP義務化が話題になっているが、自社の製造ラインで何をどこまで対応すればいいのか分からない」「経過措置の期限が近づいているのは知っているが、後回しにしてしまっている」。錠剤・カプセル形状の健康食品を製造している現場では、こうした不安を抱えている担当者が少なくないのではないでしょうか。
改正されたGMP告示(基準)は2026年9月1日に完全施行されますが、経過措置は2026年8月31日までとされています。製造・品質管理体制の点検や記録体制の整備には一定の時間がかかるため、「まだ先の話」と考えているうちに準備期間が足りなくなってしまうケースも起こり得ます。
本記事では、機能性表示食品のGMP義務化の対象範囲と完全施行までのスケジュール、法令が求めている内容と民間認証取得との違い、そして経過措置終了までに製造現場が着手しておくべきポイントを整理します。
機能性表示食品のGMP義務化とは|2026年9月1日完全施行の概要
まずは、今回の制度改正の対象範囲とスケジュールを正確に押さえておきましょう。
対象は「天然抽出物等を原材料とする錠剤・カプセル剤等食品」
今回のGMP義務化の対象となるのは、機能性表示食品のうち天然抽出物等を原材料とする錠剤・カプセル剤等食品です。天然由来の抽出物(成分が濃縮されたもの等)や化学的合成品を原材料とし、錠剤・カプセル・粉末・液剤といった形状に加工された製品が該当します。従来の食品製造とは異なる、医薬品的な製造管理の考え方が求められる領域です。
一方で、飲料やゼリー、通常の加工食品形状で販売される機能性表示食品は、今回のGMP義務化の直接の対象には含まれません。ただし、同じ工場内で対象品と非対象品の両方を製造している場合は、原材料の受け入れから保管に至るまでの動線を分けて管理する必要があるかどうかも含めて、自社の製造ラインが対象範囲に該当するかを個別に確認しておくことが重要です。
経過措置は2026年8月31日まで
改正GMP告示の完全施行日は2026年9月1日です。それまでの経過措置期間は2026年8月31日までとされており、この期限までに製造所のGMP対応を完了させることが求められます。完全施行後は、経過措置に頼った運用を続けることはできません。

法令が求めているのは「GMP基準の遵守」であり、認証取得そのものではない
「GMP認証を取得しなければならない」と誤解されがちですが、法令上の義務内容を正確に理解しておくことが重要です。
GMP告示(基準)の内容
法令が求めているのは、国が定めた基準(GMP告示)を守って製造することです。原材料の受け入れから製造工程、包装、出荷に至るまでの各段階で、品質を一定に保つための手順・記録・検証の仕組みを整備し、それを遵守することが求められます。
民間認証取得が実務上有効な理由
民間団体によるGMP認証の取得自体は、法令上の必須要件ではありません。しかし、基準を守っていることを自ら証明する必要があるため、第三者認証を取得しておくことは、取引先や消費者庁への説明、監査対応において実務上非常に有効な手段となります。認証取得を目指す場合は、審査機関への申請から審査完了までに一定の期間を要する点も踏まえてスケジュールを組む必要があります。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 法令上の義務 | GMP告示(基準)に沿った製造・品質管理体制の遵守 |
| 法令上の任意事項 | 民間団体によるGMP認証の取得 |
| 実務上のメリット | 第三者認証により遵守状況を客観的に証明でき、取引先説明・監査対応が円滑になる |
経過措置終了までに、製造現場が対応すべきこと
期限までに何を優先して進めるべきか、着手すべき項目を順番に整理します。
製造工程・品質管理体制の点検
まずは現状の製造工程と品質管理体制を、GMP告示の要求事項と照らし合わせて点検します。原材料の受け入れ検査、工程内管理、最終製品検査のそれぞれについて、手順が明文化され、実際に運用されているかを確認する作業です。既存のHACCP・食品安全規格への対応状況も参考になります。基本的な考え方は食品工場のHACCP・食品安全規格 完全ガイドで解説しています。
記録・文書体制の整備
GMPでは、決められた手順どおりに製造が行われたことを記録として残すことが重視されます。製造記録・検査記録・逸脱があった場合の是正処置記録など、どの文書をどのくらいの期間保管するかを整理し、現場で無理なく運用できる記録様式に落とし込んでおく必要があります。
認証取得を検討する場合は審査期間を逆算する
第三者認証の取得を検討している場合、審査機関への申請から現地審査、是正対応、認証発行までには数か月単位の期間を要することが一般的です。経過措置期限である2026年8月31日から逆算し、遅くともいつまでに申請すべきかを早めに確認しておくことが、期限内対応の鍵になります。
| 対応項目 | 内容 |
|---|---|
| ①現状点検 | 現行の製造・品質管理体制をGMP告示の要求事項と照合 |
| ②ギャップ整理 | 不足している手順・記録・体制を洗い出す |
| ③体制整備 | 手順書・記録様式の作成、現場への教育・定着 |
| ④認証申請(任意) | 審査期間を踏まえ、期限から逆算して早期に申請 |

対応が経過措置に間に合わなかった場合のリスク
準備を先送りにした場合、どのような影響が想定されるのかを確認しておきましょう。
機能性表示そのものが維持できなくなるおそれ
GMP基準を満たさない状態で完全施行日を迎えた場合、機能性表示食品としての届出内容の維持や、該当製品の製造・出荷そのものに支障が生じるおそれがあります。健康食品分野は消費者からの信頼が事業継続に直結するため、対応の遅れが事業リスクとして顕在化しやすい領域といえます。
取引先からの信頼低下
OEM製造を受託している場合、委託元の企業からGMP対応状況の確認を求められるケースも増えています。対応が遅れていることが判明すれば、既存の取引継続や新規案件の獲得に影響する可能性もあるため、早めの着手が望ましいといえます。委託元企業にとっても、製造委託先のGMP対応状況は自社の機能性表示食品の届出を維持できるかどうかに直結する重要事項であり、今後は取引開始前の確認項目としてGMP対応状況を明示的に求める動きが広がっていくと考えられます。

まとめ:経過措置期限から逆算し、早めの着手を
機能性表示食品のうち天然抽出物等を原材料とする錠剤・カプセル剤等食品は、2026年9月1日にGMP告示が完全施行され、経過措置は2026年8月31日までとされています。法令が求めているのはGMP基準の遵守であり、民間認証の取得は任意ですが、遵守状況を証明する実務上の手段として有効です。
現状の製造・品質管理体制の点検、記録体制の整備、認証取得を検討する場合の審査期間の逆算など、着手すべき項目は多岐にわたります。「何から手をつければよいか分からない」「期限までに間に合うか不安」という場合は、お気軽にご相談ください。
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