【2026年施行】改正労働安全衛生法で食品工場は何が変わる?高年齢労働者対策・化学物質管理・個人事業者への対応

食品工場の安全衛生担当者が改正労働安全衛生法の資料を確認している様子

2025年5月に公布された改正労働安全衛生法が、2026年1月から段階的に施行され始めています。ニュースやセミナー案内で名前は見聞きしても、「うちのような食品工場に直接関係があるのか」「結局、何が変わって、何をすればいいのか」を整理できていない担当者は少なくないはずです。

食品工場は、パート・アルバイトを含めた高齢の従業員、清掃・殺菌に使う次亜塩素酸水などの化学薬品、設備メンテナンスで出入りする外部の個人事業者など、今回の改正が直撃する要素を数多く抱えています。それにもかかわらず、世の中に出回る解説記事の多くは製造業全般や建設業向けが中心で、食品工場特有の視点でまとめられたものはほとんど見当たりません。

本記事では、数ある改正内容の中から食品工場に関係の深い3つの柱、「高年齢労働者対策」「化学物質の自律的管理」「個人事業者等への対応」に絞り込み、施行時期と現場で具体的に何をすべきかを整理して解説します。


2026年、労働安全衛生法はどう変わるのか|改正の全体像

今回の改正は一つの制度だけを変えるものではなく、複数の柱が組み合わさった大きな見直しです。まずは全体像を押さえておきましょう。

改正の背景|多様な人材が安全に働ける職場づくり

今回の改正の狙いは、高齢者・外国人材・個人事業者など、これまでの労働安全衛生法が必ずしも十分にカバーしきれていなかった多様な働き手が、安全に、そして安心して働き続けられる職場環境を整えることにあります。人手不足が続く食品工場にとっては、まさに自社の人員構成そのものに関わるテーマといえます。

施行スケジュールの全体像

改正法は2025年5月に公布され、2026年1月1日から内容ごとに順次施行されています。すべてが一斉に始まるわけではなく、項目によって施行時期が異なる点に注意が必要です。次の章から解説する高年齢労働者対策は2026年4月1日から、個人事業者等に関する一部の制度は2027年1月からと、複数年にまたがって段階的に適用されていきます。自社に関係する項目がいつから始まるのかを、まずは正確に把握することが対応の第一歩です。

改正のポイント施行時期の目安食品工場への関係
高年齢労働者対策の努力義務化2026年4月1日〜高齢パート・シニア人材が多い現場ほど影響大
化学物質の自律的管理の強化段階的に継続次亜塩素酸水・洗浄剤等を使う現場は要確認
個人事業者等の位置づけ明確化2026年〜、報告制度は2027年1月〜外部業者の出入りが多い工場は要確認
メンタルヘルス対策の推進段階的に継続ストレスチェック運用の見直しが必要な場合あり
改正労働安全衛生法の3つの柱(高年齢労働者対策・化学物質管理・個人事業者対応)を示すアイコン比較パネル

柱①高年齢労働者対策|2026年4月から努力義務化

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食品工場にとって、おそらく最も影響が大きいのがこの柱です。2026年4月1日から、事業者は高年齢労働者の労働災害を防ぐため、その特性に配慮した作業環境の改善や作業の管理などの措置を講じるよう努めることが求められます。

なぜ今、高年齢労働者対策なのか

食品工場の製造現場は、パートやシニア層の従業員によって支えられているケースが少なくありません。加齢によって視力・聴力・バランス感覚・とっさの判断力などが低下することは自然なことですが、これがぬれた床での転倒や、稼働中の設備への巻き込まれといった労働災害につながりやすいという実態があります。今回の努力義務化は、こうした現場の実情を制度として後押しするものといえます。

食品工場で求められる具体的な配慮

具体的には、段差や滑りやすい床の解消、照度の見直し、荷物の運搬方法の工夫、作業スピードを求めすぎない人員配置などが挙げられます。すでにはさまれ・転倒事故の防止に取り組んでいる工場も多いと思いますが、その延長線上で「高齢者だから起きやすい災害」という視点を明確に加えることが今回のポイントです。KYT(危険予知訓練)の具体的な進め方については食品工場の労働災害防止ガイドで詳しく解説していますので、高年齢者向けの視点を加えて活用してください。

食品工場で高年齢の従業員が安全に配慮しながら作業している様子

柱②化学物質の自律的管理|次亜塩素酸・洗浄剤も対象に

今回の改正では、化学物質による健康障害を防ぐための規制強化と、事業者自らがリスクを評価して管理する「自律的管理」への移行が引き続き進められています。食品工場では「化学物質」と聞くと縁遠く感じるかもしれませんが、実際には身近な薬剤が対象になっているケースが少なくありません。

SDS・ラベル表示の対象物質は年々拡大している

洗浄・殺菌に使う次亜塩素酸ナトリウムやアルコール系の薬剤は、SDS(安全データシート)による情報伝達やラベル表示の対象になっている場合があります。対象物質のリストは年々拡大される方針で改正が重ねられており、「以前は対象外だった薬剤が、いつの間にか対象になっていた」という事態も起こり得ます。次亜塩素酸水そのものの使用基準についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。

食品工場の洗浄・殺菌現場で見落としがちなポイント

特に見落とされがちなのが、原液を薄めて使う場面です。薄めて使うから安全、というわけではなく、取り扱う濃度や作業環境によってはリスク評価の対象になります。物理的洗浄と化学的殺菌を組み合わせた衛生管理の基本的な考え方はこちらの記事で解説していますので、薬剤の取り扱いルールを見直す際の参考にしてください。

食品工場で洗浄剤のSDSやラベル表示を確認している様子

柱③個人事業者等への対応|出入り業者への配慮も義務に

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今回の改正では、一人親方やフリーランスといった「個人事業者等」が、労働安全衛生法による保護の対象および義務の主体として明確に位置づけられました。食品工場のように、設備の保守・清掃・配送などで外部の個人事業者が出入りする現場にとっては見過ごせない変更です。

混在作業場所での措置義務拡大

自社の従業員と外部の個人事業者が同じ場所で混在して作業する場合、注文者側にも一定の配慮や連絡調整の措置が求められるようになります。設備メンテナンス業者やスポットの清掃業者を受け入れる際、これまで以上に作業エリアの区分や危険箇所の周知を丁寧に行う必要が出てくる可能性があります。

食品工場に出入りする外部事業者への影響

個人事業者自身にも、業務上の災害が起きた際の報告制度が新たに設けられる方向で、こちらは2027年1月からの施行が予定されています。自社が発注者側になる場合、委託先の個人事業者にどこまで安全衛生上の情報を提供しているか、今のうちに棚卸ししておくと安心です。


食品工場が今すぐ着手すべきこと

法改正への対応というと身構えてしまいますが、多くの部分は既存の安全衛生の取り組みを土台にして、視点を追加・拡張することで対応できます。

既存のKYT・安全教育の仕組みを土台に

すでにKYTやヒヤリハット報告の仕組みがある工場であれば、そこに「高年齢者だから起きやすい災害」「この薬剤は対象物質になっていないか」という新しいチェック項目を追加するところから始めるのが現実的です。ヒヤリハット報告の仕組みを立て直した実例はこちらの記事で紹介していますので、報告の仕組みそのものに課題を感じている場合は参考にしてください。

自社対応が難しい場合の選択肢

対象物質の洗い出しやSDSの整備、高年齢労働者向けの作業環境改善などを自社だけで進めるのが難しい場合は、衛生管理体制そのものの見直しを外部の専門家に相談するという選択肢もあります。HACCPの自己流運用に限界を感じている場合の考え方は食品工場の衛生管理体制構築をプロに依頼するには?で解説していますので、あわせてご覧ください。

食品工場の担当者が労働安全衛生法改正への対応チェックリストを確認している様子

まとめ:制度への対応は、現場の安全そのものへの投資

2026年施行の改正労働安全衛生法は、高年齢労働者対策・化学物質の自律的管理・個人事業者等への対応という3つの柱を中心に、段階的に食品工場の現場にも関わってきます。いずれも「新しく何かを始める」というより、「今ある安全衛生の取り組みに、新しい視点を加える」対応が中心になるはずです。

熱中症対策など季節性の高いリスクへの備えは食品工場の熱中症対策完全ガイドでも解説しています。制度改正をきっかけに、現場の安全衛生体制全体を見直してみてはいかがでしょうか。

自社だけでの対応に不安がある場合や、衛生管理・安全衛生体制の構築についてご相談されたい場合は、お気軽にお問い合わせください。

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今井 正久 プロフィール写真
サイト運営者・代表者紹介
今井 正久
FMネットワーク・エンタープライズ株式会社 代表取締役CEO
食品工場設備衛生管理・HACCPCIP洗浄異物混入対策生産ライン設計省エネ設備DX化推進
食品機械エンジニアとして20年以上のキャリアを持つ食品工場専門コンサルタント。国内外300社以上の食品工場で設備設計・生産ライン構築・衛生管理体制の整備を支援してきた実績を持つ。HACCP義務化対応・FSSC22000認証取得・異物混入対策・CIP洗浄システム導入・DX化推進など、食品安全と生産性向上の両立を得意とする。