ナフサショック「第二波」到来|ホルムズ海峡再開後も食品値上げが加速する理由と工場の対策【2026年7月最新】

ナフサショック第二波と食品工場への影響を象徴する編集イメージ、タンカーと食品工場の合成ビジュアル

「包装フィルムの仕入れ値は高止まりしたまま」「ホルムズ海峡は再開したと聞いたのに、なぜ値上げ品目はむしろ増えているのか」。2026年2月に始まったナフサ不足問題は、半年近く経ったいまも食品工場の現場を悩ませ続けています。

米国とイランは2026年6月、ホルムズ海峡の航行再開に向けた覚書(MoU)に合意し、供給不安そのものはやや和らぎつつあります。しかし帝国データバンクの調査によれば、2026年7月の食品値上げ品目数は2,269品目と、6月の1,078品目から一気に倍増しました。海峡が再開に向かっているのに、なぜ値上げは収まらないのか。多くの食品工場の担当者が同じ疑問を抱えているのではないでしょうか。

本記事では、ナフサ不足問題のこれまでの経緯を整理したうえで、なぜ「海峡再開後」のいまこそ値上げの第二波が食品業界を直撃しているのかを最新データで解説します。そのうえで、食品工場が今すぐ着手すべき具体的な対策を、設備投資の視点も交えて紹介します。

1. ナフサ危機、いま何が起きているのか(2026年7月時点の最新状況)

まずは2026年7月時点の最新状況を整理します。海峡再開のニュースだけを見て「もう落ち着いた」と考えるのは早計です。

海峡は再開、しかし危機は終わっていない

2026年6月中旬、米国とイランは停戦延長とホルムズ海峡再開に向けた覚書(MoU)に大筋合意し、6月19日に署名されました。これを受けて海峡での船舶航行は再開し始めていますが、詳細を詰めるための60日間の協議期間が続いており、供給体制が完全に平常化したわけではない点に注意が必要です。

価格は乱高下、先行きは依然不透明

ナフサのスポット価格は、危機発生前の2026年2月27日時点で1トンあたり588ドル程度でしたが、5月16日には1,043ドルまで高騰しました。その後、6月3日には767ドルまで急落するなど乱高下を繰り返しており、6月9日時点でも728ドル前後と、危機前より2割以上高い水準が続いています。石化プラントのエチレン稼働率も67.3%にとどまるなど、供給網の毀損は根深いままです。

2026年2月から7月にかけてのナフサ価格推移と食品値上げ品目数の折れ線グラフ

2. なぜ今、値上げの「第二波」が食品業界を襲っているのか

海峡再開のニュースとは裏腹に、食品業界では値上げがむしろ加速しています。その理由を、最新の統計データから読み解きます。

値上げ要因「包装・資材」が過去最高の73.7%に

帝国データバンクの調査によると、2026年6月の食品値上げにおいて「包装・資材」を要因に挙げた企業の割合は73.7%に達し、調査開始以来で最高を更新しました。トレー・容器・フィルムなど、ナフサ由来の資材価格高騰が直接的な要因です。中東情勢そのものを値上げ要因として明記した企業も22.7%にのぼります。

7月の値上げ品目は6月の2倍超に

さらに深刻なのが7月です。食品値上げ品目数は2,269品目と、6月の1,078品目から倍増しました。単月で2,000品目を超えるのは4月以来のことで、前年同月比でも2025年12月以来7カ月ぶりにプラスへ転じています。2026年通年では1〜7月判明分だけで9,000品目を超え、調査開始の2022年以来5年連続で年間1万品目を突破する見通しです。

指標数値出典
2026年6月の食品値上げ品目数1,078品目帝国データバンク
2026年7月の食品値上げ品目数2,269品目(6月比2倍超)帝国データバンク
値上げ要因「包装・資材」の割合73.7%(過去最高)帝国データバンク
値上げ要因「中東情勢」の割合22.7%帝国データバンク
ナフサスポット価格(6月9日時点)728ドル/トン(危機前比+23.8%)市況データ
エチレンプラント稼働率67.3%業界データ

3. なぜ「海峡再開後」なのに値上げが止まらないのか

供給不安が和らいだはずなのに値上げが加速する背景には、いくつかのタイムラグ要因があります。まず、原料の価格高騰が容器・包材メーカーの調達契約、製造、在庫消化を経て食品メーカーへの納品価格に反映されるまでには、通常数ヶ月単位のタイムラグが生じます。2〜5月に発生したコスト増が、いま6〜7月の値上げとして表面化しているというわけです。

加えて、6月の価格急落は供給が正常化したというより、需要側が買い控える「需要破壊」による一時的な要因が大きいとみられています。米国産ナフサの輸入量が5倍に増えるなど代替調達は進んでいるものの、エチレン稼働率が67.3%にとどまっている事実が示す通り、供給網の毀損は簡単には元に戻りません。海峡再開後も、価格は不安定な推移が続くと見ておくべきでしょう。

4. 食品工場が受けている具体的な打撃

あらためて、食品工場が受けている打撃を整理しておきましょう。食品の原材料そのものにナフサは使われていませんが、包装資材・容器・衛生資材のほぼすべてがナフサ由来のプラスチックであるため、影響は製造現場を直撃しています。

  • 包装資材・容器コストの急騰:汎用合成樹脂(PE・PP・PSなど)の取引価格は危機発生前と比べて依然2〜3割高い水準。大手包材メーカーからの値上げ打診が相次いでいます。
  • 資材の調達難・供給不安:在庫が尽きれば生産ラインが止まるという警告が包装フィルムメーカーから出ており、代替調達先の確保が急務になっています。
  • 物流コストの上昇:燃料価格の上昇が入荷・出荷コストを直接押し上げています。
  • 生産停止リスクの現実化:帝国データバンクの4月調査では、食品企業の過半数が「10月までが限界」と回答しており、その節目が3ヶ月後に迫っています。

5. 食品工場が今すぐ取るべき6つの対策

「10月までが限界」と回答した企業が過半数を占めていたことを踏まえると、対応に残された時間は多くありません。規模や状況に応じて優先度は異なりますが、以下6つが基本となる打ち手です。

対策① 包装資材の在庫・調達状況を緊急点検する

現在の在庫で何日分の生産が可能か、主力サプライヤーからの次回納品は確定しているか、代替サプライヤーはあるかを今すぐリスト化してください。サプライヤーとの情報共有頻度を上げることも重要です。

対策② 複数の調達先を確保する(マルチソーシング)

特定の包材メーカー1社に依存している場合は、複数社からの調達体制に切り替えることが急務です。切り替えには品質確認の時間が必要なため、今すぐ動き始めることが重要です。

対策③ 代替素材・環境対応素材への切り替えを検討する

紙素材・バイオプラスチック・セルロース系フィルムなど、ナフサ由来のプラスチックに依存しない素材への切り替えは、長期的な原料調達リスクの低減につながります。食品の特性(水分・油脂・賞味期限)に合わせた素材選定を専門業者と相談しましょう。

対策④ 包装ラインの効率を見直し、資材使用量を削減する

価格が上がった資材を「いかに少なく使うか」という発想も重要です。フィルムのオーバーラップ量の見直し、包装サイズの最適化、充填率の向上により、資材使用量を数%削減するだけでもコスト影響を大きく抑えられます。

対策⑤ コスト上昇分の価格転嫁を計画的に進める

値上げ要因に「包装・資材」を挙げる企業が73.7%に達しているいま、業界全体で同じ問題を抱えているという事実は取引先との交渉の根拠になります。データと根拠を整理した説明資料を準備し、早めに価格改定交渉を始めましょう。

対策⑥ 中古・リユース設備の活用でコスト構造を改善する

新たな包装ラインへの投資が必要な場面でも、中古設備の活用により初期投資を大幅に抑えられます。ナフサ由来素材への依存度を下げる新しい包装形態(真空包装・スキンパック・紙容器対応ラインなど)への移行を、低コストで実現する手段として検討する価値があります。中古設備選定のポイントは以下の記事で詳しく解説しています。

中古設備の賢い選び方で年間コストを30%削減する方法~導入前に知っておくべきリスクと失敗しない選定基準~
食品工場の設備投資を抑えたい方必見。中古機械の導入で年間コストを30%削減する具体的な方法を解説します。故障リスクや衛生面の懸念を解消する「失敗しない選定基準」とは?プロの視点から中古設備の賢い選び方を詳しくご紹介します。
食品工場が包装資材コスト高騰に備えて点検すべき6つの対策を示すチェックリスト風イラスト

6. 設備・包装ラインの見直しが競争力を左右する

ナフサ不足は「コスト問題」として語られがちですが、その本質は「資材依存のサプライチェーン構造」が持つ脆弱性が露わになった出来事です。今回の危機を乗り越えた企業と乗り越えられなかった企業の差は、対応スピードだけでなく、いかに早く設備・調達・包装の見直しに着手できたかによって決まると言っても過言ではありません。

  • フィルム使用量を削減できる最新包装機への更新(旧型機からの切り替えで資材使用量10〜15%削減の事例も)
  • 紙・バイオ素材対応の包装ラインへの一部移行(原料調達リスクの分散)
  • 真空包装・スキンパック設備の導入(フィルム使用量の最小化と鮮度保持の両立)
  • ラインの稼働効率・歩留まりの改善(資材ロス削減でコスト吸収力を高める)

設備更新には費用と時間がかかりますが、中古設備の活用や段階的なライン改善により、現実的なコストで実行することが可能です。包装機の種類や選び方については、以下の記事もあわせてご覧ください。

包装機の選び方完全ガイド【2026年版】|種類・メーカー・価格を食品工場向けに徹底比較
食品工場向け包装機の選び方を専門家が解説。ピロー包装機・真空包装機など7種類の特徴比較、主要メーカー情報、価格目安、選定チェックリストまで網羅。導入失敗を防ぐ実践的ガイド。

7. まとめ:残り数ヶ月が正念場

ホルムズ海峡の再開合意という明るいニュースが出た一方で、食品業界の値上げは7月に入って加速しています。帝国データバンクの調査では、食品企業の過半数が「10月までが限界」と回答しており、その節目まで残り数ヶ月しかありません。楽観できる状況ではないものの、この危機は同時に「包装資材・設備・調達の構造を根本から見直す機会」でもあります。旧来のコスト構造に依存したまま現状維持を選ぶ企業と、今動いて体制を強化した企業では、1〜2年後の競争力に大きな差が生まれるでしょう。

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今井 正久 プロフィール写真
この記事を書いた専門家
今井 正久
FMネットワーク・エンタープライズ株式会社 代表取締役CEO
食品工場設備衛生管理・HACCPCIP洗浄異物混入対策生産ライン設計省エネ設備DX化推進
食品機械エンジニアとして20年以上のキャリアを持つ食品工場専門コンサルタント。国内外300社以上の食品工場で設備設計・生産ライン構築・衛生管理体制の整備を支援してきた実績を持つ。HACCP義務化対応・FSSC22000認証取得・異物混入対策・CIP洗浄システム導入・DX化推進など、食品安全と生産性向上の両立を得意とする。