ナフサショック「第三波」|ホルムズ海峡が再封鎖、8月の食品値上げは前年比8割増に【2026年8月最新】

ホルムズ海峡再封鎖によるナフサショック第三波と食品値上げ加速を示すアイキャッチ画像

「包装フィルムの仕入れ値はまだ下がらない」「ホルムズ海峡は再開したはずなのに、なぜまた値上げが加速しているのか」——2026年2月に始まったナフサ不足問題は、半年以上が経過したいまも収束の気配がありません。それどころか、事態はより深刻な局面に入っています。

2026年6月、米国とイランが海峡再開に向けた覚書(MoU)に合意したというニュースで「もう峠は越えた」と考えた食品工場の担当者は少なくないでしょう。しかしその安心はわずか3週間ほどしか続きませんでした。7月12日、イラン革命防衛隊がホルムズ海峡を再び封鎖し、ナフサ価格は急騰。2026年8月の食品値上げ品目数は前年同月比8割増という記録的な水準に達しています。

本記事では、なぜ「再開」のはずだった海峡が再封鎖に至ったのか、その結果として食品業界にどれほどの影響が出ているのかを最新データで整理します。そのうえで、繰り返される供給ショックに振り回されない工場体制をつくるために、いま何をすべきかを具体的に解説します。

1. 「第三波」に突入した理由|再開合意はわずか3週間で崩れた

まずは2026年6月から8月にかけての経緯を時系列で整理します。「海峡再開」という見出しだけを追っていると、いま何が起きているのかを正確に把握するのは困難です。

7月12日、イラン革命防衛隊がホルムズ海峡を再封鎖

2026年6月19日、米国とイランはホルムズ海峡の航行再開に向けた覚書(MoU)に署名し、市場には安堵感が広がりました。しかしこの合意はあくまで「大筋」にとどまっており、詳細を詰める協議が続くなかで事態は暗転します。2026年7月12日、イラン革命防衛隊が海峡を再び封鎖しました。半年前に起きた最初の危機の再来です。

ナフサ価格は再び急騰、通関価格は1か月で57%上昇

再封鎖の影響は価格にただちに表れました。ナフサの輸入CIF価格は6月25日時点の627ドル/トンから、7月24日には982ドル/トンへと、わずか1か月で57%も上昇しました。その後はやや落ち着きを取り戻しつつあるものの、2026年8月7日時点でも725ドル/トンと、危機発生前と比べて依然高い水準が続いています。円安の進行もコスト増に追い打ちをかけており、輸入依存度の高い包装資材コストは二重の圧迫を受けている状況です。

2026年2月の海峡封鎖から6月の再開合意、7月の再封鎖に至るナフサ価格推移と食品値上げ品目数を示す複合グラフ

2. 8月の食品値上げは前年比8割増|「中東発値上げラッシュ」が本格化

海峡の再封鎖が実際の値上げとしてどれほどの影響を及ぼしているのか、帝国データバンクの最新調査データから確認していきます。

8月実績は2,311品目、集計開始以来2番目の水準

帝国データバンクの調査によると、2026年8月の食品値上げ品目数は2,311品目に達し、前年同月(1,262品目)比で8割増となりました。単月の品目数としては、集計を開始した2022年に次ぐ過去2番目の多さです。分野別では加工食品が1,419品目と最多で、調味料589品目、原材料276品目と続いています。

9月は4,531品目を予測、単月では約3年ぶりの多さに

さらに深刻なのが9月です。当初3,029品目とされていた予測は、各社の値上げ発表が相次いだ結果、7月末時点の集計で4,531品目へと大幅に上方修正されました。単月で4,000品目を超えるのは2023年10月以来、約3年ぶりのことです。2026年通年では1万8,347品目に達する見通しとなっており、集計開始の2022年以来5年連続で年間1万品目を突破する異例の事態が続いています。

指標数値出典
2026年6月の食品値上げ品目数1,078品目帝国データバンク
2026年8月の食品値上げ品目数2,311品目(前年同月比8割増)帝国データバンク
2026年9月の値上げ予測品目数4,531品目(約3年ぶりの多さ)帝国データバンク
2026年通年の値上げ品目見通し18,347品目(5年連続1万品目超)帝国データバンク
ナフサ輸入CIF価格(7月24日時点)982ドル/トン(6月25日比+57%)市況データ
ナフサ価格(8月7日時点)725ドル/トン市況データ

3. なぜ再封鎖のたびに影響が積み上がるのか

「海峡さえ再開すれば元に戻る」という単純な話ではない点に注意が必要です。原料価格の上昇が容器・包材メーカーの調達契約、製造、在庫消化を経て食品メーカーへの納品価格に反映されるまでには、通常数か月のタイムラグが生じます。6月の一時的な小康状態で発注した在庫が尽きる頃に再封鎖が重なり、価格転嫁の波が二重、三重に押し寄せる構造になっているのです。

さらに、封鎖と再開が繰り返されるたびに、荷主や商社は「次もまた止まるかもしれない」という前提でリスクプレミアムを価格に上乗せするようになります。一度崩れた供給網への信頼は、海峡の通行が再開されても簡単には戻りません。この「疑心暗鬼」の心理こそが、価格の高止まりと値上げの連鎖を長期化させる一因になっています。

4. 食品工場が受けている打撃と、迫るタイムリミット

あらためて、現場が直面している打撃を整理しておきましょう。食品の原材料そのものにナフサは使われていませんが、包装資材・容器・衛生資材のほぼすべてがナフサ由来のプラスチックであるため、影響は製造現場を直撃しています。

  • 包装資材・容器コストの高止まり:汎用合成樹脂(PE・PP・PSなど)は再封鎖前と比べても2〜3割高い水準が続いています。
  • 資材の調達難・供給不安:主要包材メーカーから「在庫切れ時は納期未定」との通告が相次いでいます。
  • 物流コストの上昇:燃料価格の上昇が入荷・出荷コストを直接押し上げ続けています。
  • 生産停止リスクの現実化:以前の調査で「10月までが限界」と回答していた企業の節目は、すでに目前に迫っています。

5. 食品工場が今すぐ取るべき6つの対策

再封鎖という新たな局面を踏まえると、対応に残された時間はさらに少なくなっています。規模や状況に応じて優先度は異なりますが、以下6つが基本となる打ち手です。

対策① 包装資材の在庫・調達状況を緊急点検する

「また封鎖される」ことを前提に、現在の在庫で何日分の生産が可能か、主力サプライヤーからの次回納品は確定しているか、代替サプライヤーはあるかを今すぐリスト化してください。サプライヤーとの情報共有頻度を上げることも重要です。

対策② 複数の調達先を確保する(マルチソーシング)

特定の包材メーカー1社に依存している場合は、複数社からの調達体制に切り替えることが急務です。切り替えには品質確認の時間が必要なため、今すぐ動き始めることが重要です。

対策③ 代替素材・環境対応素材への切り替えを検討する

紙素材・バイオプラスチック・セルロース系フィルムなど、ナフサ由来のプラスチックに依存しない素材への切り替えは、長期的な原料調達リスクの低減につながります。食品の特性(水分・油脂・賞味期限)に合わせた素材選定を専門業者と相談しましょう。

対策④ 包装ラインの効率を見直し、資材使用量を削減する

価格が上がった資材を「いかに少なく使うか」という発想も重要です。フィルムのオーバーラップ量の見直し、包装サイズの最適化、充填率の向上により、資材使用量を数%削減するだけでもコスト影響を大きく抑えられます。

対策⑤ コスト上昇分の価格転嫁を計画的に進める

食品値上げが前年比8割増という記録的な水準に達しているいま、業界全体で同じ問題を抱えているという事実は取引先との交渉の根拠になります。データと根拠を整理した説明資料を準備し、早めに価格改定交渉を始めましょう。

対策⑥ 中古・リユース設備の活用でコスト構造を改善する

新たな包装ラインへの投資が必要な場面でも、中古設備の活用により初期投資を大幅に抑えられます。ナフサ由来素材への依存度を下げる新しい包装形態(真空包装・スキンパック・紙容器対応ラインなど)への移行を、低コストで実現する手段として検討する価値があります。中古設備選定のポイントは以下の記事で詳しく解説しています。

中古設備の賢い選び方で年間コストを30%削減する方法~導入前に知っておくべきリスクと失敗しない選定基準~
食品工場の設備投資を抑えたい方必見。中古機械の導入で年間コストを30%削減する具体的な方法を解説します。故障リスクや衛生面の懸念を解消する「失敗しない選定基準」とは?プロの視点から中古設備の賢い選び方を詳しくご紹介します。コストを抑えつつ品質も妥協したくない方に、おすすめです。
食品工場が包装資材コスト高騰に備えて点検すべき6つの対策を示すチェックリスト風イラスト

6. 設備・包装ラインの見直しが競争力を左右する

ナフサ不足は「一時的なコスト問題」として語られがちですが、封鎖・再開・再封鎖が繰り返されているいま、その本質は「資材依存のサプライチェーン構造」が抱える脆弱性そのものだと捉え直す必要があります。今回の局面を乗り越えられる企業とそうでない企業の差は、対応スピードだけでなく、いかに早く設備・調達・包装の見直しに着手できたかによって決まると言っても過言ではありません。

  • フィルム使用量を削減できる最新包装機への更新(旧型機からの切り替えで資材使用量10〜15%削減の事例も)
  • 紙・バイオ素材対応の包装ラインへの一部移行(原料調達リスクの分散)
  • 真空包装・スキンパック設備の導入(フィルム使用量の最小化と鮮度保持の両立)
  • ラインの稼働効率・歩留まりの改善(資材ロス削減でコスト吸収力を高める)

設備更新には費用と時間がかかりますが、中古設備の活用や段階的なライン改善により、現実的なコストで実行することが可能です。包装機の種類や選び方については、以下の記事もあわせてご覧ください。

包装機の選び方完全ガイド【2026年版】|種類・メーカー・価格を食品工場向けに徹底比較
食品工場向け包装機の選び方を専門家が解説。ピロー包装機・真空包装機など7種類の特徴比較、主要メーカー情報、価格目安、選定チェックリストまで網羅。導入失敗を防ぐ実践的ガイド。自社製品に合った包装機選びの確実な第一歩として、ぜひご活用ください。

7. まとめ:「止まる前提」で動ける工場が生き残る

今回の再封鎖は、「海峡さえ再開すれば安心」という見方が通用しないことを示しました。今後も同様の供給途絶が繰り返される可能性を前提に、包装資材・調達・設備の構造を見直した工場と、様子見を続けた工場とでは、1〜2年後の競争力に大きな差が生まれるはずです。楽観できる状況ではありませんが、この危機は同時に、旧来のコスト構造を根本から見直す機会でもあります。

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今井 正久 プロフィール写真
この記事を書いた専門家
今井 正久
FMネットワーク・エンタープライズ株式会社 代表取締役CEO
食品工場設備衛生管理・HACCPCIP洗浄異物混入対策生産ライン設計省エネ設備DX化推進
食品機械エンジニアとして20年以上のキャリアを持つ食品工場専門コンサルタント。国内外300社以上の食品工場で設備設計・生産ライン構築・衛生管理体制の整備を支援してきた実績を持つ。HACCP義務化対応・FSSC22000認証取得・異物混入対策・CIP洗浄システム導入・DX化推進など、食品安全と生産性向上の両立を得意とする。