食品工場の人手不足倒産を防ぐには|帝国データバンクのデータで見る実態と設備投資という選択肢

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「求人を出しても応募が来ない」「ベテランが退職したら、その工程を回せる人がいなくなった」。多くの食品工場でこうした声が聞かれるようになって久しいですが、この人手不足が「倒産」という最悪の結果に直結するケースが、統計上も明確に増えていることをご存知でしょうか。

帝国データバンクの調査によると、人手不足を主因とする倒産(人手不足倒産)は3年連続で過去最多を更新し続けています。しかも、その中身は「求人を出しても人が集まらない」というだけでなく、既存の従業員が辞めてしまったことで事業が立ち行かなくなる「従業員退職型」が過去最多を記録しているのが特徴です。

本記事では、人手不足倒産の最新データと食品工場特有のリスク要因を整理したうえで、採用強化・外国人材の受け入れ・設備投資による自動化という3つの選択肢を比較し、限られた経営資源の中でどう手を打つべきかを解説します。


2025年度、人手不足倒産が3年連続で過去最多を更新

「人手不足で倒産」というと大げさに聞こえるかもしれませんが、帝国データバンクが公表しているデータを見ると、決して他人事ではない水準まで増えていることが分かります。

441件、2013年以降で初めて400件超え

帝国データバンクの「人手不足倒産の動向調査(2025年度)」によると、2025年度の人手不足倒産は441件となり、前年度比で約1.3倍、2013年の調査開始以降で初めて400件を超えました。3年連続での過去最多更新であり、増加のペースはむしろ加速しています。2026年上半期の企業倒産全体も5,335件と4年連続の増加、2年連続で5,000件を超え、「物価高倒産」と並んで「人手不足倒産」が過去最多を更新しています。

「従業員退職型」倒産が過去最多の118件

特に注目すべきは、人手不足倒産の内訳です。従業員や経営幹部などの退職が引き金となった「従業員退職型」の倒産は118件となり、こちらも過去最多を更新しました。求人を出しても応募が来ないという「採用難型」だけでなく、今いる従業員が辞めてしまうことで一気に事業継続が困難になるケースが増えているのです。これは、慢性的な人手不足の職場ほど一人あたりの負荷が高く、退職の連鎖が起きやすいという構造を示しています。

人手不足倒産が2025年度441件と3年連続で過去最多を更新したことを示す推移グラフ

なぜ食品工場は人手不足倒産のリスクが高いのか

人手不足倒産は特定の業種に偏って起きているわけではありませんが、食品工場には他業種以上にリスクを高める構造的な要因がいくつか存在します。

若年層の都市部流出と団塊世代の大量退職

地方に立地する食品加工工場では、若年層の都市部への流出により、採用対象となる人材そのものが年々減少しています。加えて団塊世代の大量退職が本格化する時期と重なっており、ベテランの技能が失われるスピードに、次の世代の育成が追いつかない状況が各地で起きています。

「きつい・寒い・不規則」という業界イメージ

早朝勤務や低温下での作業、立ち仕事が中心という食品工場特有の労働環境は、他業種と比較して求職者に敬遠されやすい要因になっています。給与水準を引き上げるだけでは採用競争に勝ちきれず、慢性的な欠員が常態化し、残った従業員の負荷が増して退職を招くという悪循環に陥りやすいのが実情です。

倒産リスクを高める要因食品工場での具体的な現れ方
採用対象人口の減少地方立地が多く、若年層の都市部流出の影響を強く受ける
ベテラン技能の急速な喪失団塊世代の大量退職と、属人化した工程の技能継承の遅れ
労働環境への忌避感早朝・低温・立ち仕事が敬遠され、採用競争で不利になりやすい
一人あたり負荷の増大欠員の常態化が残った従業員の負荷を上げ、退職の連鎖を招く

人手不足を乗り切るための3つの選択肢

限られた経営資源の中で、どこに手を打つべきか。代表的な3つの選択肢を、それぞれの限界も含めて整理します。

採用強化には限界がある

求人媒体への出稿強化や給与水準の見直しは有効な打ち手の一つですが、地域の労働力人口そのものが減っている以上、採用だけで根本的な解決を図るのは難しくなっています。採用コストが年々上昇する一方で、応募数は思うように増えないという声が多くの工場から聞かれます。

外国人材の受け入れという選択肢

特定技能をはじめとする外国人材の受け入れは、人手不足を補う有力な選択肢です。ただし、在留資格の要件確認や登録支援機関との連携、多言語での安全・衛生教育など、受け入れ体制の整備には一定の準備期間とノウハウが必要です。制度の全体像や実務のポイントは食品工場の特定技能外国人材 受け入れ実践ガイドで解説しています。

設備投資による自動化・省人化

採用にも外国人材の受け入れにも限界がある以上、最終的には「そもそも必要な人数を減らす」という発想、すなわち協働ロボットや自動化設備への投資が避けて通れない選択肢になります。省人化・自動化の進め方は食品工場の省人化・自動化ガイドで詳しく解説しています。あわせて、限られた人数で複数の工程をこなせるようにする多能工化も、人手不足への即効性のある対策です。多能工化・スキルマップの実践方法はこちらの記事をご覧ください。

人手不足への3つの選択肢(採用強化・外国人材受け入れ・設備投資による自動化)を比較する図解

設備投資という経営判断を、どう進めるか

「自動化した方がいいのは分かっているが、何から手をつければいいか分からない」という声も多く聞かれます。判断のポイントを整理します。

どの工程から自動化すべきか、優先順位の付け方

すべての工程を一度に自動化しようとすると投資額が膨らみすぎるため、「欠員が出ると事業継続に直結する工程」「離職率が高くベテラン依存度が高い工程」を優先的に洗い出すことが重要です。デジタル化・データ活用によって自社の弱点工程を可視化する取り組みも有効で、DX推進の進め方は食品工場のDX人材不足はどう解決する?でも触れています。

自社だけで判断せず、専門家に相談するという選択肢

設備投資は失敗すると数百万円から数千万円単位の損失につながりかねない、経営に直結する意思決定です。自社の生産ラインを熟知した専門家に現状診断からライン設計まで相談することで、投資判断のスピードと精度を高められます。設備選定・生産ラインの相談先については食品工場の生産ライン改善・設備導入をプロに依頼するには?で詳しく解説しています。

食品工場の経営者が設備投資の優先順位を検討している様子

まとめ:人手不足を「今の延長線」で乗り切るのは難しい

人手不足倒産は3年連続で過去最多を更新し、既存の従業員が辞めることで事業継続が困難になる「従業員退職型」が特に増えています。地方立地・労働環境への忌避感といった食品工場特有の要因を踏まえると、採用強化だけで乗り切るのは年々難しくなっているのが実情です。

外国人材の受け入れや多能工化と並行して、設備投資による省人化を経営判断として早めに検討することが、倒産リスクを遠ざける最も確実な道筋になります。「どの工程から自動化すべきか分からない」「投資判断の前にまず現状を診断してほしい」という方は、ぜひ弊社にご相談ください。

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今井 正久 プロフィール写真
この記事を書いた専門家
今井 正久
FMネットワーク・エンタープライズ株式会社 代表取締役CEO
食品工場設備衛生管理・HACCPCIP洗浄異物混入対策生産ライン設計省エネ設備DX化推進
食品機械エンジニアとして20年以上のキャリアを持つ食品工場専門コンサルタント。国内外300社以上の食品工場で設備設計・生産ライン構築・衛生管理体制の整備を支援してきた実績を持つ。HACCP義務化対応・FSSC22000認証取得・異物混入対策・CIP洗浄システム導入・DX化推進など、食品安全と生産性向上の両立を得意とする。