「技能実習生を受け入れているが、2027年に制度が変わるという話を聞いた」——そんな話を耳にして、詳細がよく分からないまま不安を感じている食品工場の経営者・採用担当者は少なくないのではないでしょうか。
2024年6月の法改正により、外国人技能実習制度は2027年4月1日に廃止され、「育成就労制度」という新しい制度に置き換わることが正式に決まっています。しかもこれは遠い将来の話ではなく、2026年4月15日には監理支援機関の許可申請受付が始まり、2026年9月1日からは育成就労計画認定の申請受付も始まったばかりという、まさに今動き出している制度改正です。
この記事では、技能実習制度がなぜ廃止されるのか、育成就労制度で何がどう変わるのか、そして食品工場が今のうちに準備しておくべきことを整理して解説します。
なぜ今、技能実習制度が廃止されるのか
技能実習制度は1993年の創設以来、「発展途上国への技能移転」という国際貢献を建前としてきましたが、実態としては人手不足を補う労働力として機能してきました。この建前と実態の乖離が、失踪や労働搾取といった問題の温床になっているという指摘が長年続いてきました。
2024年6月の法改正で正式決定
2024年6月14日、技能実習制度を廃止し「育成就労制度」を新設するための関連法改正が国会で可決・成立しました。単なる名称変更ではなく、制度の目的そのものが「国際貢献のための技能移転」から「人材育成を通じた人材確保」へと転換されたことが最大のポイントです。
「建前と実態」のズレが生んだ転籍制限という課題
従来の技能実習制度では、やむを得ない事情がない限り実習先の変更(転籍)が認められていませんでした。これが実質的な労働力として機能している実態と噛み合わず、劣悪な環境からの失踪や人権上の問題につながっているという批判を受けてきました。育成就労制度では、この転籍制限のあり方が大きく見直されます。


「育成就労制度」で何が変わるのか
育成就労制度は、単に技能実習制度の看板を掛け替えたものではありません。受け入れ企業の実務に直結する変更点を整理します。
同一分野内での転籍が一定条件で可能になる
最も大きな変更点は、本人の意向による転籍が認められるようになることです。同じ受け入れ先で1〜2年程度就労するなどの要件を満たせば、同一分野内であれば別の企業へ転籍できるようになります。これは受け入れ企業にとって、「せっかく育成した人材が他社へ移ってしまう」というリスクを意味すると同時に、「他社で経験を積んだ人材を受け入れられる」という機会にもなります。
監理団体は「監理支援機関」へ、許可要件が厳格化
技能実習制度における「監理団体」は、育成就労制度では「監理支援機関」という名称に変わり、許可要件がより厳格化されます。外部監査人の設置義務や、受け入れ企業との利害関係に関する規制が強化される見込みで、これまで付き合いのあった監理団体がそのまま監理支援機関として許可を得られるとは限りません。
| 項目 | 技能実習制度 | 育成就労制度 |
|---|---|---|
| 制度目的 | 国際貢献(技能移転) | 人材育成を通じた人材確保 |
| 転籍 | 原則不可 | 同一分野内で条件付き可能 |
| 受け入れ調整機関 | 監理団体 | 監理支援機関(許可要件が厳格化) |
| 施行時期 | 2027年3月末で廃止 | 2027年4月1日運用開始 |

スケジュールと今すぐ確認すべきこと
育成就労制度への移行は段階的に進みます。自社が今どの段階にいるのかを正確に把握しておきましょう。
2026年4月15日〜:監理支援機関の許可申請受付開始
現在の監理団体が新制度下でも監理支援機関として活動を続けるには、改めて許可を取得する必要があります。付き合いのある監理団体がこの申請をどう進めているか、確認しておくことをおすすめします。
2026年9月1日〜:育成就労計画認定の申請受付開始
受け入れ企業が育成就労制度で外国人材を受け入れるための計画認定の申請が、まさに今月から始まっています。新規に外国人材の受け入れを検討している場合、この計画認定の枠組みを前提に準備を進める段階に入っています。
2026年中は技能実習の新規受け入れも並行して可能
2027年3月末までは技能実習制度による新規の受け入れも制度上は可能な移行期間にあたります。ただし2027年4月1日以降、既存の技能実習生についても新制度下での扱いに関する移行措置(3年間の経過措置)が適用されるため、早い段階で自社の受け入れ計画を育成就労制度を前提としたものに切り替えていくのが現実的です。

育成就労制度と特定技能制度の関係|混同しやすい2つの違い
育成就労制度について調べていると、既に運用されている「特定技能制度」との違いが分かりにくく感じる方も多いのではないでしょうか。両者は別物ではなく、キャリアパスとして連続した関係にあります。
育成就労は「入口」、特定技能は「その先のキャリア」
育成就労制度は、これまで技能実習制度が担っていた「未経験からの受け入れ・育成」という入口の役割を引き継ぐ制度です。育成就労のもとで一定期間の育成を受けた人材は、その後、特定技能1号(さらに要件を満たせば特定技能2号)へとステップアップしていくことが想定されています。つまり、育成就労は特定技能に至るまでの「1段階目」として位置づけられており、両者を対立する制度ではなく、一連の人材育成ルートとして理解しておくことが重要です。
対象分野は特定技能とおおむね連動する
育成就労制度の対象分野は、人手不足が深刻な特定技能制度の対象分野とおおむね連動する形で設定される見込みです。食品製造業も特定技能の対象分野に含まれているため、多くの食品工場にとって育成就労制度は無関係な話ではなく、今後の外国人材受け入れの主要な入口の一つになっていくと考えられます。既に特定技能人材の受け入れを検討している工場は、育成就労制度もあわせて視野に入れて採用計画を立てることをおすすめします。
食品工場が今のうちに準備すべきこと
制度の詳細を理解した上で、食品工場の現場では具体的に何を準備すればよいのでしょうか。
1. 監理団体・監理支援機関との関係を早めに確認する
現在の監理団体が監理支援機関としての許可取得を進めているか、進めていない場合は今後どう連携すべきかを早めに確認しましょう。監理支援機関が決まらなければ、育成就労計画の認定申請そのものが進められません。
2. 「転籍されない」ための定着施策が今まで以上に重要になる
転籍が可能になるということは、受け入れ企業側にとって「選ばれ続ける職場であること」がこれまで以上に重要な経営課題になるということです。処遇・労働環境・キャリアパスの明確さといった定着施策の巧拙が、今後は人材の確保・流出に直接影響します。

3. 既存の技能実習生への説明・移行対応を計画しておく
すでに技能実習生を受け入れている場合、2027年4月以降にどのような移行措置が適用されるのか、監理団体・監理支援機関を通じて早めに情報を得ておくことが、現場の混乱を避けるために重要です。本人たちへの説明のタイミングや内容についても、事前に方針を固めておきましょう。

まとめ
技能実習制度の廃止と育成就労制度への移行は、2027年4月という期限が明確に決まっている制度改正であり、申請受付は既に始まっています。「まだ先の話」と後回しにするのではなく、監理団体・監理支援機関との関係確認、転籍を前提とした定着施策の強化、既存実習生への移行対応という3点から、今のうちに準備を始めることをおすすめします。
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