「同じ派遣スタッフでも、技能実習生や特定技能人材の方が欠勤も少なく、仕事に対して前向きな気がする」。食品工場の現場責任者や採用担当者から、こうした感想を耳にする機会が増えています。一方で「本当にそうなのか」「たまたま良い人に当たっただけではないか」と、感覚的な話として片付けてしまっている工場も少なくありません。
実は、この「外国人材はよく働く」という現場の実感には、厚生労働省の雇用動向調査や出入国在留管理庁の公表資料など、裏付けとなるデータや制度的な背景が存在します。単なる国民性の違いではなく、在留資格の仕組みや選考プロセスといった「構造」が、就労意欲や定着率に影響しているのです。
本記事では、離職率に関する公的データを整理したうえで、外国人材の就労意欲が高くなりやすい4つの構造的な理由を詳しく解説します。あわせて、「良く働く」状態は受け入れ側の体制づくりがあってこそ成立するものであり、待遇や生活支援を怠ればその前提が崩れてしまうという注意点についても触れていきます。
「外国人材はよく働く」と言われる背景にあるデータ
まずは、現場の実感を裏付ける公的なデータを見ていきます。ポイントは「日本人か外国人か」という国籍の違いそのものではなく、雇用形態や制度が就労意欲・定着率にどう影響しているかという視点です。
有期雇用の離職率は、無期雇用の2倍以上
厚生労働省の「令和5年雇用動向調査」によると、2023年の労働者全体の離職率は15.4%で、近年もおおむね15%前後で推移しています。注目すべきは雇用形態による差で、有期雇用(派遣スタッフの多くが該当します)の離職率は、無期雇用(正社員など)と比較して平均で2.36倍高いという結果が出ています。つまり、日本人であっても「派遣」という雇用形態そのものが、構造的に離職・入れ替わりが起きやすい仕組みになっているのです。

技能実習生の失踪、原因の約67%は「賃金」の不満だった
一方で、技能実習生の失踪は年間1万人前後で推移しており、2023年には9,753人に達したことが出入国在留管理庁の公表資料などから分かっています。この数字だけを見ると「外国人材は定着しにくい」という印象を持たれるかもしれません。しかし重要なのはその原因で、失踪理由の約67%が賃金に関する不満(契約と異なる低賃金、最低賃金未満の支払い、違法な控除など)だったと報告されています。つまり、失踪の主因は「働く意欲の低さ」ではなく、受け入れ側の待遇の問題である可能性が高いのです。この点は次の章で詳しく解説します。
外国人材の就労意欲が高くなりやすい4つの構造的理由
技能実習・特定技能などの制度を通じて働く外国人材には、日本人の一般的な派遣スタッフとは異なる、いくつかの構造的な動機付けが働いています。ここでは代表的な4つの理由を整理します。
理由①:在留資格が「働き続けること」と直結している
特定技能や技能実習の在留資格は、就労していることそのものが在留の前提条件になっています。日本人の派遣スタッフであれば、ある仕事を辞めても生活基盤そのものが揺らぐことは基本的にありませんが、外国人材にとって「無断欠勤の常態化」や「突然の離職」は、在留資格の維持に関わる重大なリスクです。この制度的な緊張感が、日々の勤怠や仕事への向き合い方に表れやすいと考えられます。
理由②:来日前に厳しい選考・試験を突破している
特定技能人材は技能水準・日本語能力の試験に合格し、技能実習生も送り出し機関による選考プロセスを経て来日しています。誰でも簡単になれるわけではなく、一定の意欲と能力を持った人材だけが選抜されてきているという点は、一般的な求人募集で採用する場合との大きな違いです。採用時点でのフィルタリングの強さが、そのまま現場での働きぶりの安定感につながっています。
理由③:家族への送金という明確な経済的目的
多くの外国人材にとって、日本での就労は本人の生活のためだけでなく、母国の家族への送金という明確な目的を伴っています。収入が生活の質を左右するという実感が強いため、残業や休日出勤にも前向きに取り組む人材が多く見られます。目的意識の明確さが、日々のモチベーションの高さに直結しているのです。
理由④:数年単位の就労が前提だから、教育投資が回収できる
技能実習は最長5年、特定技能1号も通算5年と、数年単位での就労が制度上の前提になっています。短期間で入れ替わりが起きやすい一般派遣と異なり、工場側も腰を据えて教育・技能伝達に投資でき、外国人材側も「早く仕事を覚えた方が自分のためになる」という意識を持ちやすくなります。この「時間軸の長さ」が、双方にとって定着への好循環を生んでいます。

「よく働く」は自動的に手に入るものではない
ここまで見てきた4つの理由は、あくまで外国人材が高い就労意欲を持ちやすい「土台」にすぎません。受け入れ側の体制が伴わなければ、この土台はすぐに崩れてしまいます。先ほど触れた技能実習生の失踪原因の67%が賃金トラブルだったという事実は、その裏返しでもあります。
賃金・待遇の不満が失踪・離職の最大要因
契約と異なる低賃金や違法な控除、残業代の未払いといった待遇面の問題は、どれほど意欲の高い人材であっても失望させ、最終的には失踪や離職という形で表面化します。適正な賃金と契約内容の徹底は、外国人材の定着を左右する最も基本的な前提条件です。
日本語教育と生活支援が定着を左右する
賃金面の問題がなくても、日本語での意思疎通が不十分なまま現場に配属したり、住居や行政手続きなど生活面のサポートが不足していたりすると、孤立感から早期離職につながりやすくなります。制度や受け入れの実務については食品工場の特定技能外国人材 受け入れ実践ガイドでも詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。

受け入れ体制づくりを自社だけで担うべきか
在留資格の判断、日本語教育、生活支援、そして万一のトラブル対応まで、これらすべてを人事担当者が本来の業務と兼務しながら整えるのは容易ではありません。自社だけで対応する場合と、外国人材派遣サービスを活用する場合の違いを整理すると、次のようになります。
| 項目 | 自社だけで対応 | 外国人材派遣サービス活用 |
|---|---|---|
| 在留資格・契約の適正管理 | 制度改正への追随や書類整備を自社で継続 | 専門知識を持つパートナーが管理・確認 |
| 日本語教育・生活支援 | 現場担当者が本来業務と兼務しがち | 受け入れ後のフォロー体制を一緒に構築 |
| 候補者の見極め | 選考ノウハウがなく判断が難しい | 食品工場の現場を踏まえた人物像で提案 |
自社での採用活動と外国人材派遣サービス活用の違いをより詳しく比較した記事として、食品工場が外国人材を採用する3つの方法|自社募集・技能実習・人材派遣を徹底比較もあわせてご覧ください。
まとめ:構造を理解すれば、外国人材の力を正しく活かせる
「外国人材はよく働く」という現場の実感は、単なる印象論ではなく、在留資格の仕組みや選考プロセス、就労の目的意識といった構造的な要因に裏付けられています。同時に、技能実習生の失踪原因の多くが賃金トラブルだったように、その意欲は適正な待遇と受け入れ体制があって初めて発揮されるものでもあります。
人手不足に悩む食品工場にとって、外国人材は有力な選択肢である一方、受け入れ体制の整備には専門的なノウハウが求められます。「何から準備すればいいか分からない」という方は、食品工場の現場を知り尽くしたパートナーへの相談も検討してみてください。

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