食品工場の排水処理コストを削減する方法|水道代・下水道使用料・薬剤費を抑える実践策

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「水道料金・下水道使用料の請求書を見るたびにため息が出る」「グリストラップの汚泥引き抜きや薬剤の費用がじわじわ経営を圧迫している」。食品工場では大量の水を使う工程が多く、電気代と並んで水回りのコストが利益を削る要因になりがちです。

ところが排水処理コストは、電気代のように「契約プランの見直し」だけで劇的に下がるものではなく、節水・処理方式・清掃頻度など複数の要素が絡み合っています。だからこそ、どこにコストの無駄が潜んでいるかを知らないまま、高い料金を払い続けている工場が少なくありません。

本記事では、水道代・下水道使用料の仕組みから、節水・汚泥処分費の削減・水の再利用・補助金の活用まで、食品工場が排水処理コストを実際に下げるための具体策を解説します。基準値そのものについては「食品工場の排水処理完全ガイド」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。


食品工場の排水処理コストはどこにかかっているのか

コスト削減の第一歩は、費用の内訳を分解して把握することです。排水処理コストは、大きく分けて次の3つで構成されています。

水道代・下水道使用料は「使った量」に連動する

多くの自治体では、下水道使用料は水道使用量を基準に算定されます。つまり「使った水はほぼそのまま排水になる」という前提で課金される仕組みです。工場が水道水を使う限り、水道料金と下水道使用料の両方が発生するため、節水は両方のコストに同時に効いてくる、最も基本的な対策になります。

薬剤費・汚泥処分費は処理方式と汚れの濃さで変わる

凝集沈殿法や活性汚泥法では、凝集剤・中和剤・栄養剤などの薬剤費に加え、発生した汚泥を産業廃棄物として処分する費用がかかります。排水に含まれる油脂分や有機物の濃度が高いほど、薬剤の使用量も汚泥の発生量も増えるため、処理設備の入口でどれだけ汚れを減らせるかがコストを大きく左右します。

設備の保守・点検費用

ポンプやブロワなどの動力費、定期点検・修繕費も無視できません。老朽化した設備を使い続けると、電気代の増加や突発故障のリスクが高まり、結果的に高くつくことがあります。

食品工場の排水処理コストの内訳(水道代・下水道使用料、薬剤費・汚泥処分費、保守点検費)を示す円グラフ風の図解

水道代・下水道使用料を下げる|節水と汚れの入口対策

最も費用対効果が高いのは、そもそも使う水と汚れの量を減らす「入口対策」です。設備投資を伴わずに始められる施策も多くあります。

洗浄工程の見直しによる節水

ホースでの流しっぱなし洗浄をやめて高圧洗浄機に切り替える、洗浄前にヘラやブラシで固形物・油脂をあらかじめ掻き取ってから洗い流す「ドライクリーニング」を徹底するだけでも、使用水量と排水の汚れ濃度の両方を減らせます。CIP洗浄システムの導入コスト最適化ガイドで紹介しているタンク方式の見直しも、節水と洗浄排水の削減に有効です。

グリストラップの清掃頻度を最適化する

グリストラップの清掃を怠ると油脂やスカムが蓄積し、分離性能が落ちて排水基準を超過しやすくなるだけでなく、詰まりによる悪臭・害虫の発生にもつながります。逆に必要以上の頻度で業者委託清掃を行うのはコストの無駄です。堆積状況を定期的に目視確認し、実態に合わせた清掃サイクルへ見直すことで、無駄な出費を抑えられます。

汚泥処分費を減らす脱水・減容化

汚泥は水分を多く含んだ状態で廃棄すると、重量課金される処分費がかさみます。脱水機で水分を絞り、汚泥の体積・重量を減らしてから廃棄することで、処分費を大きく圧縮できるケースがあります。

処理設備の不調を放置しない

基準値を超過しそうになるたびに薬剤を多めに投入して急場をしのいでいると、薬剤費が想定以上に膨らみます。基準超過や汚泥増加が繰り返し起きている場合は、応急処置を重ねるよりも根本原因を特定したほうが、結果的にコストを抑えられます。原因診断の考え方は「食品工場の排水トラブル診断ガイド」で詳しく解説しています。

対策効果が出る費用項目初期投資の目安
ドライクリーニングの徹底水道代・下水道使用料・薬剤費ほぼ不要(運用改善)
グリストラップ清掃頻度の最適化清掃委託費不要〜低
汚泥脱水機の導入汚泥処分費中〜高(補助金対象になりうる)

水の再利用と設備更新による中長期のコスト削減

入口対策で削減しきれない分は、水の使い方そのものを見直す中長期の施策で対応します。

処理水の再利用(リサイクル)

処理後の排水を、製品に直接触れない用途(床洗浄水、冷却水、緑地散水など)に再利用することで、新たに使う水道水の量そのものを減らせます。食品と接触する用途への再利用は衛生上のハードルが高いため、まずは非接触用途からの導入が現実的です。

自家用水道・井戸水への切り替え

使用水量が多い工場では、井戸水を水源とする自家用水道への切り替えによって水道料金そのものを大きく圧縮できる場合があります。ただし井戸水は水質検査や設備投資、地盤沈下規制など地域ごとの制約があるため、専門業者や自治体への事前相談が欠かせません。食品工場の電気代を削減する方法と同様に、水回りのコストも複数の選択肢を比較検討することが重要です。

活用できる補助金・支援制度

排水処理設備の更新や省エネ型設備への切り替えは、国や自治体の省エネ・環境対応系の補助金の対象になることがあります。制度の内容は年度によって変わるため、設備更新を検討するタイミングで最新の公募情報を確認することをおすすめします。

処理後の排水を床洗浄や散水など非接触用途に再利用する食品工場の設備イメージ

コスト削減を成功させる進め方

思いつきで対策を打つのではなく、現状把握から始めて優先順位をつけることが、遠回りのようで最も確実な近道です。

まずは請求書と使用量を「見える化」する

過去1〜2年分の水道・下水道の請求書を並べ、月ごと・工程ごとの使用量の推移を可視化すると、無駄が集中している時期や工程が見えてきます。データに基づく可視化の考え方は食品工場の”見えないロス”をデータで発見するでも解説しています。

投資回収期間で優先順位をつける

運用改善(ドライクリーニングの徹底、清掃頻度の最適化)は初期投資がほぼ不要なため最優先で着手し、脱水機や自家用水道の導入といった投資が必要な施策は、削減額と投資額から回収期間を試算したうえで判断すると、無理のない計画を立てられます。

水道・下水道の請求書データをグラフで可視化し削減の優先順位を検討する食品工場担当者のイメージ

まとめ:入口対策と可視化から始めれば、排水コストは着実に下げられる

排水処理コストは、水道代・下水道使用料、薬剤費・汚泥処分費、保守点検費という複数の要素が積み重なって発生します。まずはドライクリーニングの徹底やグリストラップ清掃頻度の見直しといった、投資を伴わない入口対策から着手し、そのうえで水の再利用や自家用水道、汚泥脱水機の導入など投資が必要な施策を、回収期間を試算しながら検討するのが着実な進め方です。

「自社の排水コストが適正水準か分からない」「設備更新を検討したいが何から手をつければいいか分からない」という場合は、ぜひ弊社にご相談ください。

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今井 正久 プロフィール写真
この記事を書いた専門家
今井 正久
FMネットワーク・エンタープライズ株式会社 代表取締役CEO
食品工場設備衛生管理・HACCPCIP洗浄異物混入対策生産ライン設計省エネ設備DX化推進
食品機械エンジニアとして20年以上のキャリアを持つ食品工場専門コンサルタント。国内外300社以上の食品工場で設備設計・生産ライン構築・衛生管理体制の整備を支援してきた実績を持つ。HACCP義務化対応・FSSC22000認証取得・異物混入対策・CIP洗浄システム導入・DX化推進など、食品安全と生産性向上の両立を得意とする。